原宿工場で初代100形と並ぶ
原宿工場で初代100形と並ぶ

横藤電鉄㈱ 鉄道事業本部 車両課 三角隼人

はじめに

横藤電鉄㈱では、平成27年(2015年)に従来式のATS(O-ATS)に代わって、高機能型の新型ATS(N-ATS)の導入を予定している。それに伴い、施設面の方では着々と準備が進んでおり、車両面でも対応工事が進められているが、600形については登場から長い年月が経過しており、バリアフリーやランニングコストの面から考えると廃車することが妥当を考えられた。また2013年は横藤電車創業100周年ということもあり、新型急行系通勤車(E-car)100形Ⅱを6両×1本の6両を新造した。

設計方針

100形Ⅱは、平成元年(1989年)に導入した800系を基本としながら、創業100周年を記念し、近年の流行りであるレトロ調にならい、前面デザインなどを戦前に登場し1970年代まで活躍した横藤電車の戦前~戦後を代表する急行車100形・150形をモチーフとして、従来車の伝統を受け継ぎながら車内外のデザインを一新した。

さらに、信頼性・快適性の向上、新技術への挑戦、バリアフリー機能・火災対策の強化、環境への配慮、省メンテナンスなどをキーワードに、次世代の横藤電車としてふさわしい仕様を目指した設計としている。

基本編成および性能

Tc-M-M'の3両ユニット2組を組み合わせた6両固定編成で、在来車との併結は行わない。基本性能は800系列と同様であり、設計最高速度は120km/h、起動加速度は3.0 km/h/s、常用最大減速度は4.0 km/h/s、非常減速度は4.5 km/h/sである。









100形 編成図

 凡例

・VVVF:主制御器(1C4M2群)

・SIV:補助電源装置(静止形インバータ)

・CP:空気圧縮機

・BT:蓄電池

車体およびエクステリアデザイン

車体は前述の通り、800形を基本としているため車体材質はアルミ合金製となっている。100形Ⅱは前面デザインを中心に800形から24年ぶりにフルモデルチェンジを行った。その前面デザインは1930年の横浜駅地下線延伸に伴い登場して1970年の昇圧に際して引退するまで戦前~戦後の横藤電車を代表した急行系小型車100形Ⅰがモチーフとなっている。その100形Ⅰはモダンな電車ということで”モデン"と呼ばれたが、そのモダンなスタイルというのはユニークな鍵形ライトや折り戸式の貫通扉に、上下に大きく開いた貫通扉窓である。「100形」という名前も引き継いでることや、懐古ブームでもあることからそれらも引き継ぐことになった。まずユニークな鍵形ライトは鍵の上部を前照灯、下部を尾灯としている。この照明は前面上部に設置されている急行灯と共に環境配慮型のLED式を採用している。また運転席下部の800系列ではライトが設置された部分が空白となったため、大きく「100」と刻んだ。次に貫通扉となるが、折り戸式の採用は断念し、貫通扉窓を大きく上下に開かせた。これにより視認性や展望性などが高くなった。これらのレトロ調のデザインを引き立たせるために、車体全体に少し丸みをもたせている。

 

800形に比べ丸みを持たせ、大きくさせた車体
800形に比べ丸みを持たせ、大きくさせた車体

100形Ⅱは塗装についても従来のE-carと同じで下半分を薄いライトグレーに、上半分をローズピンクにしている。この塗装に関しては設計当初、100形Ⅰをモチーフにするのなら、茶色に塗ってしまえ」などという案も出たが、茶色はどうしても綺麗に色を出すのが難しく、古臭くなってしまうので断念された。

客室設備およびインテリアデザイン

腰掛配置は車端部を除いて、ロングシートとなっている。ロングシートは片持ち式の座席で、モケットは従来通りの赤色でクッションは柔らかめのものを使用し、整備にもやさしく、お客様にもやさしい設計としている。車端部は沿線に湘南という有数の観光地などもあるため、750形でも採用された向かい合わせの固定式クロスシートを設置している。この固定クロスシートの背面には補助席も設けており、閑散時は少しでも多くのお客様が着席できるようにしている。ロングシート部のスタンションポールは単なる「つかまり棒」という機能だけでなく、お客さまの居住性にも配慮し、ポールを車体中央部へ大きく反らすことで、立席と着席のお客様間隔を間隔を大きめに取るとともに、立席のお客様の視覚的圧迫感を軽減した。先頭車には車いすスペースを設けている。これは車いすのご利用が無い場合にはベビーカーや立席スペースなどにも活用でき、立席のお客様用の手すりも設けている。またサービス向上のため、横藤電鉄としては初めてとなるLCD案内表示機(トレインビジョン)を千鳥配置で一枚ずつ設置されている。化粧板はホワイトで椅子は赤色の座席と共に、明るい車内を演出している。

車内は標準部品を今までより多く使っている。ロングシート部分は3人と5人の所で仕切りをしている。

横藤電鉄としては初めてのトレインビジョン

乗務員室

100形Ⅱの乗務員室の各種操作機器は従来車と同一のもので、主幹制御器・ブレーキ制御器は2ハンドルタイプのデスクタイプマスコンである。これはカーブなどが多いためノッチのオンオフをたくさん繰り返すときにワンハンドルマスコンだと誤ってB段に入れてしまうことが懸念されたからである。また900形で採用されたタッチパネル式モニタ情報表示器を配しており、乗務員に対する運行支援機能、主要装置の状態表示機能、行先・車内案内表示器などに代表される乗客サービス機器設定機能、運行状況記録機能などを有しており、乗務員の負担軽減、車両状況の把握や故障分析の容易化、省メンテナンス化が図られている。さらに平成27年(2015年)に導入予定の新型ATSの対応装置を搭載している。

台車・主要機器

台車・各主要機器は実績があり、信頼性の高いものを使用している。これは1955年登場の500形で新機軸の部品を取り入れすぎて、扱いにくくなったということがあったのが大きな理由で、それ以来横藤電車では他社などでもしっかりとした実績があってから新技術を導入している。

台車

台車はKW-9-O形(電動車用)およびKW-10-O形(付随車用)円筒案内式ボルスタ付き台車である。この台車は750形で採用されて以来、E-carの標準台車となっている。100形Ⅱの計画当初、L-carの900形で採用されている軸梁式ボルスタレス台車にして製造コストを抑えたり軽量化を図ろうとしたが、ボルスタレス台車の場合、乗り心地が悪くなったりするなどということがあり、長距離客の多いとされるE-carの100形Ⅱでは乗り心地に妥協を許さなかったので採用は見送られた。

主電動機・駆動装置

主電動機は従来通りの821形から採用されてる120kwの誘導電動機MB-5043で、駆動装置も同一のWNドライブとして、保守の低減化を図っている。

制御装置

制御装置は1C4M2群制御のIGBT-VVVFインバーター制御装置MAP-128-15V121を採用した。

ブレーキ装置

ブレーキ装置も従来車と同様のMBSA形回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ装置を採用している。T車優先遅れ込め制御とし、付随車には車輪の滑走を防止する滑走防止制御装置を装備している。

その他

主要機器はあまり変化が無かったが警笛と行先・種別表示機、警笛の部品をこれまでとは違うものを採用している。行先・種別表示機では行先を白色LED、種別をフルカラーLEDを採用し、従来の字幕方式に比べて、省エネルギー・省メンテナンス化を図っている。さらに、電子笛の音色は戦前~戦中・戦後に使用された、音色を出来る限り忠実に再現しており、半世紀前のも音色が現代によみがえった。

側面表示機(撮影:ほくそー氏)

おわりに

100形は、横藤電鉄創業100周年という大きな節目に誕生した。この100年間で積み上げてきた伝統やノウハウを大切にしながらも、新しい技術を取り入れて、省エネルギー・省メンテナンス・快適性の向上などが実現できた。100形の設計には車両課だけでなく、各部門のトップ達や若手社員、そして新しい目線が欲しいということで女性社員も初めて車両の設計に携わった。横藤電車一丸となって誕生した100形、ぜひ読者の皆さまには一度ご乗車いただき、ご意見賜りたい。